落ち着く世界は難しい

今日、前バイトしてたバイト先の人たちとの飲み会があった。結果として、とても楽しかった。

 

今バイトしてる場所は、少しだけ特殊だから、わりと似たような趣味の人が多くて、なんとなく高校大学で友達になってきた人と似てる雰囲気なので、なんとなく嗜好だけでなく、思考も似ている。

 

でも、前のバイト先は飲食店で、いろんな人が働いている。

元ギャルの少し気が強いけど子どもっぽいお姉さん、わたしより若いのにわたしより前から働いてて飲食業が向いてるけど少し雑な男の子、若い綺麗な女の子が好きなおじさん、がわたしの働き始めたときの契約社員主要メンバー。最初は飲食が初めてなのに何も教えてくれねぇ、アホかいな、と思ってけっこう憎んでいたけど、今となってはみんな好き。

「女バス」と一言で表したくなる、性格に裏表がなくはっきりとしてるけど性格のいい肌がキレイな美人のお姉さん、わたしが辞める前に入ったおしゃれで美人なお姉さん、あんまりシフトが被らなかったけど、掛け持ち先は雀荘の少し夜っぽい雰囲気のお姉さん、少し距離の縮め方が微妙だけど、仲良くなっちゃえばフランクに接してくれるからうれしいお姉さん、いつもまつ毛がキマッてる、おしゃれなお姉さん(正直、少しおばさん)。女性メンバーは主に彼女たち。

 

そして、若いけどレストランの店員さんっぽい雰囲気をちゃんと出してるお兄さん、でもけっこうミスとかも多いでも優しい、と、薬学部に通ってたけど教授と合わなくて退学しちゃった映画好きのお兄さん、ちょっとかっこいい、ほんとは性格ちょっと良くないとこもあるけど夢みさせて、と、韓国人のお酒クセが悪い、いつもニコニコしてていい人だけど遅刻の多いお兄さん。んで、このお兄さんが連れてきた、最近入ったばかりの韓国人のかわいい女の子、前にもこのお兄さんはガールフレンドにここを紹介している。前のガールフレンドは謎に心が病んでる様子ですぐ辞めた。今回の子は大丈夫そう。

 

この愉快なメンバー、と、あとだいぶ遅れて一人、同い年の榮倉奈々似の女の子、サバサバしててコミュ力が高い。高校時代からの友達と顔が少し似てて親近感がある、仲良くしたいけど、なんの話題をしゃべればいちばん盛り上がれるのか、未だにわたしは距離をはかっている。

 

という感じで、ここの職場で出会った人たちは、もし同じクラスでも仲良くならないだろうな、という人たちばかりなのである。

でも、それが楽しい。わたしが今までとってこなかったコミュニケーションの仕方があって、みんなサバサバ思ったことを言ったりして、いじったり、ボケたり、ほんの少し下ネタだったり、わたしはそういうコミュニケーションが苦手。というか、わたしにそのノリは組み込まれてなくて、人に対してそういう接し方ができない。

いつもわたしの会話のとっかかりは、パーソナルな話から始まる。好きなもの、趣味、あれ見た?これやったことある?好きなものの話で盛り上がったりだとか、おもしろいものの話を聞いたりだとか。こういう場ではあまりパーソナルな話はされない。いや、されてはいるはずなんだけど。お酒も飲んだし、今日した話がうまく思い出せないや。

 

わたしはすぐに好きなものの話をしたくなる。でもそれはとても一方的で、コミュニケーションとしては手数が少なくなる、って感じ。「わたしはこういうものが好きなんだよね。なんでってこうこうこうで、こういうふうなんだよ」と話されて「ああ、君はそういうものに対してそう感じる人間なんだね」ということがわかる。相手のことがわかりはするけど、そういうことじゃないんだよなあ、今日のような飲み会は。そういうコミュニケーションじゃなくて「○○」「××」「☆☆☆」と、続いていく、「楽しい会話」をするのが、なぜか苦手だ。ずっとわからない。この人たちのお話は好きだけど、うまくできない。いつもおとなしくなってしまう。

 

そして、こういう、いつもの自分、いつもの自分のコミュニケーションの仕方、いつもの自分のおしゃべりを封じられてしまうと、わたしは途端に「かわいい人」という括りになる。それもいまいち、よくわかってない。高校生のときケンタッキーでバイトしてたときもそうだな。わたしはなぜかブスなのに「大人しくてでもほんとはちょっとお茶目なとこのあるかわいい子」となる。ほんとのわたしはバリバリに根暗で尖ってるのに、こんな評価を受けていいのか!?と、ちょっと申し訳なくなる。

 

でも、実際あの場にいるわたしは、とても楽しくて心穏やかで、いつもの根暗のわたしなんかどこにもいなくて、だからわたしは「大人しくてでもほんとはちょっとお茶目なとこのあるかわいい子」でいいのかなあとも思う。

 

帰りに、先述したわたしより若いのにわたしより前から働いてて飲食業が向いてるけど少し雑な男の子が、「俺と○○さん付き合ってるって知ってました?」と、めちゃくちゃ鈍いわたしでも完全にわかる、というかむしろ公にしてるんだと思ってた交際をバラして、そして「別れたんです」と言われたので、それがおもしろかった。「いつ別れたんですか?」と聞いたら「4ヶ月前」と言っていた。飲み会中、胸が痛いんです、と言っていたり、4ヶ月も経ってるのに、付き合ってたことは言ってなかったのに別れたことをわざわざ言っちゃうあたり、ほんとに落ち込んでて人にしゃべりたいんだな、と思ったら、少し嫌いなとこもあった男の子に対して温かい気持ちになれたことがうれしくて楽しくてよかった。

わたしより前から働いててわたしより仕事ができたし、見た目もなんか大人っぽい子だったので完全に年上のような気持ちが抜けなかったけど、ああ、この子もこの年齢で恋して傷ついて大変なのね、恋っていいわね、ここにもまじめな人生があるのね。この歌舞伎町で、ちょっとチャラそうな服を着たこの男の子にもね。と、思った。この人のことをしっかりと未熟な男の子として、認識できた。

こういう、人のそこまでの過程が見えて、うっすらと実家が見えるようなときが、好きだ。

 

帰りにいっしょの電車で帰った、ちょっとだけかっこいいお兄さんとは、ちょっとだけかっこいいな、と思いながらも福利厚生とか、勝手にわたしがお兄ちゃんの話を始めてしまったせいで、なんにもなしで帰ってしまった。この人も、わたしと好みがまったく違いそうなのに、実家の穏やかな風景がうっすらと透けている気がして、好きなのだ。垢抜けているとか、そういうことでもなく。好みも普段いる場所も違うのに、その人の根本が穏やかだと思える人が好きだ。

安心したいな。落ち着く、と思いたいな。

 

少し下世話なことを言うと、好きな男の人の首筋にひっつく想像をしては、そういう安心できる・落ち着けるホルモンを自分で生成してる。人生つらいことばっかだからね…