落ち着く世界は難しい

今日、前バイトしてたバイト先の人たちとの飲み会があった。結果として、とても楽しかった。

 

今バイトしてる場所は、少しだけ特殊だから、わりと似たような趣味の人が多くて、なんとなく高校大学で友達になってきた人と似てる雰囲気なので、なんとなく嗜好だけでなく、思考も似ている。

 

でも、前のバイト先は飲食店で、いろんな人が働いている。

元ギャルの少し気が強いけど子どもっぽいお姉さん、わたしより若いのにわたしより前から働いてて飲食業が向いてるけど少し雑な男の子、若い綺麗な女の子が好きなおじさん、がわたしの働き始めたときの契約社員主要メンバー。最初は飲食が初めてなのに何も教えてくれねぇ、アホかいな、と思ってけっこう憎んでいたけど、今となってはみんな好き。

「女バス」と一言で表したくなる、性格に裏表がなくはっきりとしてるけど性格のいい肌がキレイな美人のお姉さん、わたしが辞める前に入ったおしゃれで美人なお姉さん、あんまりシフトが被らなかったけど、掛け持ち先は雀荘の少し夜っぽい雰囲気のお姉さん、少し距離の縮め方が微妙だけど、仲良くなっちゃえばフランクに接してくれるからうれしいお姉さん、いつもまつ毛がキマッてる、おしゃれなお姉さん(正直、少しおばさん)。女性メンバーは主に彼女たち。

 

そして、若いけどレストランの店員さんっぽい雰囲気をちゃんと出してるお兄さん、でもけっこうミスとかも多いでも優しい、と、薬学部に通ってたけど教授と合わなくて退学しちゃった映画好きのお兄さん、ちょっとかっこいい、ほんとは性格ちょっと良くないとこもあるけど夢みさせて、と、韓国人のお酒クセが悪い、いつもニコニコしてていい人だけど遅刻の多いお兄さん。んで、このお兄さんが連れてきた、最近入ったばかりの韓国人のかわいい女の子、前にもこのお兄さんはガールフレンドにここを紹介している。前のガールフレンドは謎に心が病んでる様子ですぐ辞めた。今回の子は大丈夫そう。

 

この愉快なメンバー、と、あとだいぶ遅れて一人、同い年の榮倉奈々似の女の子、サバサバしててコミュ力が高い。高校時代からの友達と顔が少し似てて親近感がある、仲良くしたいけど、なんの話題をしゃべればいちばん盛り上がれるのか、未だにわたしは距離をはかっている。

 

という感じで、ここの職場で出会った人たちは、もし同じクラスでも仲良くならないだろうな、という人たちばかりなのである。

でも、それが楽しい。わたしが今までとってこなかったコミュニケーションの仕方があって、みんなサバサバ思ったことを言ったりして、いじったり、ボケたり、ほんの少し下ネタだったり、わたしはそういうコミュニケーションが苦手。というか、わたしにそのノリは組み込まれてなくて、人に対してそういう接し方ができない。

いつもわたしの会話のとっかかりは、パーソナルな話から始まる。好きなもの、趣味、あれ見た?これやったことある?好きなものの話で盛り上がったりだとか、おもしろいものの話を聞いたりだとか。こういう場ではあまりパーソナルな話はされない。いや、されてはいるはずなんだけど。お酒も飲んだし、今日した話がうまく思い出せないや。

 

わたしはすぐに好きなものの話をしたくなる。でもそれはとても一方的で、コミュニケーションとしては手数が少なくなる、って感じ。「わたしはこういうものが好きなんだよね。なんでってこうこうこうで、こういうふうなんだよ」と話されて「ああ、君はそういうものに対してそう感じる人間なんだね」ということがわかる。相手のことがわかりはするけど、そういうことじゃないんだよなあ、今日のような飲み会は。そういうコミュニケーションじゃなくて「○○」「××」「☆☆☆」と、続いていく、「楽しい会話」をするのが、なぜか苦手だ。ずっとわからない。この人たちのお話は好きだけど、うまくできない。いつもおとなしくなってしまう。

 

そして、こういう、いつもの自分、いつもの自分のコミュニケーションの仕方、いつもの自分のおしゃべりを封じられてしまうと、わたしは途端に「かわいい人」という括りになる。それもいまいち、よくわかってない。高校生のときケンタッキーでバイトしてたときもそうだな。わたしはなぜかブスなのに「大人しくてでもほんとはちょっとお茶目なとこのあるかわいい子」となる。ほんとのわたしはバリバリに根暗で尖ってるのに、こんな評価を受けていいのか!?と、ちょっと申し訳なくなる。

 

でも、実際あの場にいるわたしは、とても楽しくて心穏やかで、いつもの根暗のわたしなんかどこにもいなくて、だからわたしは「大人しくてでもほんとはちょっとお茶目なとこのあるかわいい子」でいいのかなあとも思う。

 

帰りに、先述したわたしより若いのにわたしより前から働いてて飲食業が向いてるけど少し雑な男の子が、「俺と○○さん付き合ってるって知ってました?」と、めちゃくちゃ鈍いわたしでも完全にわかる、というかむしろ公にしてるんだと思ってた交際をバラして、そして「別れたんです」と言われたので、それがおもしろかった。「いつ別れたんですか?」と聞いたら「4ヶ月前」と言っていた。飲み会中、胸が痛いんです、と言っていたり、4ヶ月も経ってるのに、付き合ってたことは言ってなかったのに別れたことをわざわざ言っちゃうあたり、ほんとに落ち込んでて人にしゃべりたいんだな、と思ったら、少し嫌いなとこもあった男の子に対して温かい気持ちになれたことがうれしくて楽しくてよかった。

わたしより前から働いててわたしより仕事ができたし、見た目もなんか大人っぽい子だったので完全に年上のような気持ちが抜けなかったけど、ああ、この子もこの年齢で恋して傷ついて大変なのね、恋っていいわね、ここにもまじめな人生があるのね。この歌舞伎町で、ちょっとチャラそうな服を着たこの男の子にもね。と、思った。この人のことをしっかりと未熟な男の子として、認識できた。

こういう、人のそこまでの過程が見えて、うっすらと実家が見えるようなときが、好きだ。

 

帰りにいっしょの電車で帰った、ちょっとだけかっこいいお兄さんとは、ちょっとだけかっこいいな、と思いながらも福利厚生とか、勝手にわたしがお兄ちゃんの話を始めてしまったせいで、なんにもなしで帰ってしまった。この人も、わたしと好みがまったく違いそうなのに、実家の穏やかな風景がうっすらと透けている気がして、好きなのだ。垢抜けているとか、そういうことでもなく。好みも普段いる場所も違うのに、その人の根本が穏やかだと思える人が好きだ。

安心したいな。落ち着く、と思いたいな。

 

少し下世話なことを言うと、好きな男の人の首筋にひっつく想像をしては、そういう安心できる・落ち着けるホルモンを自分で生成してる。人生つらいことばっかだからね…

好きでも嫌いでもない街

今週のお題「好きな街」

 

急に、弟から「お姉ちゃんのせいでパパお金全然くれんやん!!!」というラインが来て、傷ついて泣いた。

わたしが役者をやってるせいで、お金がなく父に今月大目に仕送りをもらったのである。

弟は大学生で、一人暮らしをしていて、部活をやっていて、YouTuberをやっている。故に、時間がなくバイトはしていない。ハタから見ると、「いや、バイトしろよ」と思うけど、まあ、それだけやってれば時間がないのもしょうがないのはたしかでもある。大学の運動部は、意外と時間もとられるし、必需品のためのお金もかかる。YouTuberをやって有名になって、お金を稼ぎたいのもわかる。YouTuberもみんな若いときからやってなんぼだし、ていうかYouTuberは旬を逃しちゃいけないし。

 

わたしももう24だし、前から、親からいつまでも仕送りをもらってることが荷重になってる。それに加えて弟。わたしだけ好きなことをやってるせいで、弟は好きなことができない。そうかそうか、わたしの気持ちだけでなくて、弟の未来にも関わっていたなんて、それはほんとに申し訳ない…わたしのせいで……。

と、わたしは通知欄にこの文章が現れてすぐ涙が出た。しかしその次には「こんなにすぐ泣いちゃう繊細で精神的に弱い人間に追い打ちをかけるなクソ弟が」とわたしは思うような人間である。

 

そして、よくよく考えてみたところ、たしかに、事象としては弟のいう通りである。わたしにお金が渡っているせいで、弟に渡るお金が減っている。しかし、違うだろうが!?わたしはTwitterで気持ちを整頓した!⬇︎

 

しかし、弟は小さい頃から、お金の使い方が荒く、お金がないなら人から貰えばいいじゃないの精神で生きているので、全てが正しいわけじゃない。わたしが大学生のときもらってたのと同じだけの仕送りをもらってるんだし

 

わたしが、「部活をやるかYouTubeをやるかどっちかにして、あなたもバイトをしなさい。そして節約しなさい」というのも、間違っていないはずだ。テニスは趣味にしては時間もお金もかかりすぎるのだから。それと並行して他もやろうなんて欲張りだな、うん。

 

うん、わたしは大学のときだってめちゃくちゃつつましく生きてたもんね。弟より狭いし大学から離れた部屋に住んで、趣味もお金がかからないものしかしないし、お金がないから劇もそんなに観に行けなかったし、絶対やりたいことは演劇と大学をちゃんと卒業することだけだった

 

うん、わたしの行い100正しいな。たまたま、事務所のせいでお金がなくなりすぎてるだけだな…急に文句飛んで来たけど、毎月父、弟にお金あげてたのが、急にわたしのせいであげられなくなったなら、お前それまではもらっとるやないかい!お姉ちゃんは今月特別や!!ってことだし、うん、100でした

 

 

と、いうわけで、わたしはわたしが悪くないことを証明し、泣き止んだのである。やったね!

父がわたしにお金をくれるのは、わたしが東京で夜の仕事をしないようにするためでもあることを知っているが、弟には特に言わなかった。父はなぜか、スーパーやコンビニでバイトをすることすら、誰でも使う場所だから治安が悪いと止める。社会のことを逆に知らないって感じがする。そんなこと言ってたらアルバイトなんてできないだろう…。なんでそこだけ急に娘を箱に入れる…?

 

わたしは三人兄弟の真ん中で、兄と弟に挟まれている。こんなふうに、弟とも、兄とも、意見がぶつかって喧嘩もするけど、基本的に小さい頃からおんなじゲームをしたり、テレビを見たりして育った仲良し兄弟だ。わたしは、兄弟がバラバラになって、家族がバラバラになってることが、寂しい。最初に家を出たのは、東京の大学に進学したわたしの癖して。でも、だからわたしがいちばん寂しいのかもしれない。

 

昨日会った、昔の知り合いの、作家をしている人が、「自分の故郷は好きでも嫌いでもないけど、死ぬときは自分の実家の自分の部屋で死にたい」って言っていた。わたしも、自分の地元の街は、好きでも嫌いでもない。特筆して、なんにもないからだ。本当に何もない、平野で、家と、田んぼと、畑と工場が、同じ分量くらいの町なのである。これは、小学2年生の生活の時間に調べ済みである。(意外とこんなことを印象的に覚えてるので、やっぱりもともと地理好きの素質を持っているんだな)

こんなどうでもいい街だけど、やっぱりわたしは、自分が長く濃く生活した街が好きだ。そこにはたくさん思い出というか、わたしが、わたしだけが感じ考えた場所の記憶っていうものがあるから。

 

この間、彼岸花の群生を見に行ったけど、わたしの頭の中にはずっと、初めて見た彼岸花の映像と、これは彼岸花っていうんだよと教えてくれた、たぶん母か祖母の言葉が浮かんでいた。それは、家のすぐ裏の、昔の集会所の裏のしめった日陰に、毎年二、三輪ひっそりと咲いていて、その彼岸花を下校のときに見るのが好きだった。そこは、わたしが高校生になって、下校ルートから外れてから、解体されてしまって、彼岸花も咲かなくなってしまった。

彼岸花がたくさん咲いているのを眺めながら、わたしはあのときの家の裏の彼岸花のことを考えて、このたくさんの彼岸花の風景には、わたしにとってなんの思い入れもないからダメだ、いまいち感動できない、と思っていた。

街でも、物でも、わたしはそこに背景・物語があるもののほうが好みだ。物語という付加は強い。

わたしは、あの家の裏の彼岸花の下で死にたい。自分の育った街のことなんて、好きでも嫌いでもないけど。生きるほど、もうどこにもないものが増えていく悲しさを、みんなどうやって乗り越えていくんだろう。

谷口くんの話

谷口くんの言葉にはいつも現実味がない。谷口くんに現実味がないのかもしれない。今日もビールを飲みながらそう思っていたことは内緒だ。

その日、わたしたちはお金がなくて、でもいつも通りに、上がったテンションを下げるために大学の近くの鳥貴族にいた。

雨が、ほんの少し降り始めていた。

三人なんですけど。

すぐ入れるって。

よかった、雨、これ以上降るかな。

天気予報ではくもりだったけど。

そっか。

明日、ばあちゃんの葬式に行かなきゃなんだよね。

え、おばあさん、亡くなったの?

うん、そうみたい。さっきライン入っててさ。

実家どこだっけ?

所沢だよ。ばあちゃんは行田市だけど。わかる?

ああ、埼玉。

うん。

じゃあ明日のスタジオ練無理ってこと?

うん、ごめん。

じゃあ俺とアヤだけで合わせるしかないか。

いや、いいんじゃない?明日は休みで。わたしもバイト連勤続いてて、声調子悪いし。

いやお前さ、バイトで調子悪いってさあ、おかしくない?やる気あんの?プロ意識が低すぎるよ。

ああ、うん、ごめん。

わたしはほんとは篠山と二人での練習が嫌なだけだった。

でもさあ、

と、谷口くんが口を挟んで、

「ばあちゃんとなんて、ずっと会ってなかったから、俺にとってばあちゃんはもうずっと死んでるみたいな状態だったわけ。なのに死んだから葬式って言われても、全然わかんないよなあ」

は、お前なんだよそれ、不謹慎じゃね?

いや、まあ、そうなんだけどさ。てか実際死んだんだから不謹慎も何もなくない?

いや、そういう問題じゃねぇだろ。笑えるけど。お前ってだからさあ、

わたし篠山が言う「お前」がひどく嫌いで、谷口くんの言葉だけを追おうと必死に反芻していた。

「ばあちゃんとなんて、ずっと会ってなかったから、俺にとってばあちゃんはもうずっと死んでるみたいな状態だったわけ。なのに死んだから葬式って言われても、全然わかんないよなあ」

雨は予報通り、もう止んでいて、わたしは冷えたコンクリートを眺めながら、谷口くんのおばあさんのことをぼんやり想像した。

 

 

 

 

お疲れ。

あの日から4日後に、スタジオ練習のためにわたしたちは集まった。待合スペースでわたしと谷口くんは会った。

どうだった?お葬式。

葬式どうだったって、なんかおかしくない?

あ、そうだね、ごめん。

人が死ぬってことが、ずっとわかんないんだよな俺。

ふーん。

うん、こないだも言ったけどさ、俺にとってばあちゃんなんて、死んでても死んでなくてもいっしょだったわけじゃん。それで、ほんとに死んだっていって、何が変わるってわけじゃなくて。ばあちゃんが棺の中にいて、顔を見ろって親とか言うけどさ、あれ、なんの意味があるんだろうな。俺はさ、死体を見にわざわざ行田まで来たのか?って着いたとき思ったね。それで、見ると、きれいでもないしおぞましくもないし、なんでもないんだよな。小さい頃俺の面倒みてくれたあのばあちゃんが、あの頃よりしょぼっとして、でも整えられて寝転がってるの。写真を見てるみたいな距離感だった。でも、俺は本物と対峙してて。いや、本物っていうのは、なんか違うな。ばあちゃんは、もうそこにはいなかったのに。

なんとなく、わかるよ。

あ、ほんと。よかった。

わたし、篠山のこと嫌い。

あ、ほんと。俺も嫌いだよ。

嘘、じゃあなんでバンド組んでんの。

あやかもじゃん。

そうだけど。

篠山はね、無邪気なんだ。無邪気だから、俺は嫌い。だけど、好きなんだ。

わたしも、最初はそう思ってたけど、もう、やになっちゃった。

そっか、じゃあ解散しよっか。

うん。

あやかはさ、歌うのが好き?

よくわかんない。

そっか。

おばあさんとの、いちばんの思い出って何?

ばあちゃん、いつも俺に厳しくて、なんていうか考え方が昔の人でさ。男なら強くなれ、飯をたくさん食え、みたいなさ、そういうのばっかで、全然いい思い出ないんだよな。

篠山が死んだら、わたし、悲しいかな。

悲しいに決まってんじゃん。

谷口くんは、おばあさんが死んで悲しかったの?

悲しくなかったに決まってんじゃん。

と、言って、谷口くんは笑った。

篠山はその10分後くらいにやってきた。

お前、いきなり解散とかわけわかんねーこというなよ!

ごめんね、わたしはもう、棺桶の中で冷えきっているんだ。わたしにとって歌うことも、今はなんなのかわからない。

もし今篠山が死んだら。

わたしはそう想像して泣きながら、谷口くんが篠山を殴るのをぼんやり見ていた。

時が過ぎて、10月

 

 

また元通りになるんだ


わたしの焦燥は少し遅すぎて


青春が一瞬で通りすぎていき


コマ送りにしてもいいけどそれも苦い


置きっ放しにしてた紅茶をすすって

 

 

 

 

大人になってあの人を待ってみたところで


どうでもいい人ばかりがわたしの目の前を通りすぎて行った


バンドマン、フリーター、SE、何をしてるのかわからない同級生


傘を持って改札前にいたけど、あなたはとうとう現れなかった

昔聴いていた音楽をひっぱりだして聞いたけど


Apple music
から流れるそれはなんだか違くて

 

 

 

 

まるでわたしは高校生であるのに


昨日撮ったSNOWではなにもかも遅すぎる


あなたがどんなにきれいなことを言ったって


わたしには荒唐無稽なおとぎ話なんだ


異国の言葉を学んでも


わたし、ちっとも人間のことがわからない

 

 

 

 

待ち合わせは金時計で

待ち合わせはモヤイ像

待ち合わせはいけふくろう

 

 

 

 

金木犀の匂いの香水を、今年も買えそうにない

 

 

 

 

わたし、やっぱりずっと幸せを待ってる

 

 

 

 

 

 

 

詩を書いた。とても久しぶりに。

過去に弱い。

なのでけっこう前からずっとおんなじことを言っている。言ってしまう。

 

全てに対してのモチベーションが、上がったり下がったりのスパンが短過ぎてびっくりしちゃう。

明日のバイトも、きっと暇すぎて、やだなあ。

明後日のことも、とてもやだ。

というか、今週のことは全部やだし、それ以降もやだし、ていうかどうしたいのかわかんなくなっちゃって、また病気になるんじゃないかとも思うけど、元気にごはんを食べて生きてられてる。

もう病弱になることもできない。

社会に溶けることは簡単かもしれない。端っこでいいのなら。

 

たくさんやりたいことがあると思ってたのに

なのに、急に休みが増えたら、もう酒を飲んだりダーツをしたり、今までのわたしが無駄だと思ってた時間ばかり過ごしたくてしかたなくて、やになっちゃう。

もちろん、映画見たり本読んだり、インプットしたりする時間も楽しいんだけど。疲れすぎて、なんにも考えたくないっぽい。

でも、他人のパーソナルな話が聞きたいのに、ダーツの話ばかりされても、別に、いいんだよ。たくさん、あなたの普段考えてる憤りとか言って頂いても。

 

ウォッカをグレープフルーツとか、トマトジュースで割ってグビグビ飲んで、これを書いている。

 

気になっている男が、過去一年以内に同じ職場で女と付き合っていたことに驚きを隠せないでいる。マジか。君はそんな、モテる人間だと思わなかった。それか、近くに私というプレシャスガールがいたのに、その女のほうが好きだったというポンコツさにがっかりしてしまった。君もその程度男なのか?

 

かといって、すぐに嫌いになれるようなわたしでもない。すぐ、他に好きな人なんて見つけられないし。君と、けっこう、セックスしてみたかったのになあ。自分の価値が高いと思ってるので、自分に対してしどろもどろしてほしいという欲が強いみたい。ブスの癖に

申し訳ねえ。

 

気になってる男と、いろんなとこに行きたくて仕方ないのに、好きな男は全然わたしのこと好きにならない。

わたしがいつもふざけまくってるせいだろうか。

今日も、性格が良い!好きですよ!と思ってる男が、「カノさん、雰囲気変わりました?」と、恋の始まりのようなセリフを言ったが、「え〜??(美顔ローラーをあてる動きをしながら)コロコロしてるからですかね???笑笑」と言ってしまった。こういうとこがダメなんだろうな。美顔ローラーをがんばってコロコロしてる女を、どうか好きになってください。

始まりだからこそ

毎日、自分よりおもしろく生きてるのかという疑いがある人に、腹が立ってしまう。だってわたしがほんとは1番おもしろい人間なのだと思っているから。

 

おもしろくないのに、我が物顔しておもしろいものにくっついていく奴が嫌い。

わたしは基本的に役者のことが好きじゃないっぽい。

おまえがおもしろく見えてるのは演出のおかげ、という演出至上主義者。思想が完全に偏っている。

 

毎日、いちばんどうしたら人生おもしろくなるのか、と思っているのに、全然うまくいかない自分に腹が立ってしまう。役者としてもうまくやっていきたいし、でもやっぱり、思考して、それを表現している人には嫉妬してしまう。毎日がんばってるはずなのに、全然そちら側にいけない気がして、急に虚しくなったし、全然正解が見えなくなった。

お金にならなくても、きっとこれは学問と同じような気がする。お金にならないことはすべて趣味と切った人たちにいいたい。そうじゃなくてきっと、わたしは生涯を通じて研究していくんだ。考えることを止めては、辞めてはいけない。

 

みんなきっとそうだね。

コンクリートの体温

 私は、コンクリートに寝そべっている。借りているアパートの近くの住宅街の道端に、寝そべっている。転んだとか、そういうわけではなくて、急に、寝そべりたくなったからだ。

 コンクリートは、生ぬるかった。五月のくもり空、寒くも、暑くもない日のコンクリートは、生ぬるかった。ほんの少しだけ、あたたかかった。

 どうしようもない日があった。

 わたしは働いていた。本当は一秒もこんなことをしたくないなあと思いながら、働いていた。その仕事は、たぶん、わたしには向いていなかった。愛想笑いは得意だと思っていたけど、それは所詮「愛想」なわけで、ほんとは笑いたくもないのに、ほんとは人に親切にしたくもないのに、毎日知らない人に対して、まるで明るく優しい親切な人みたいな自分を作って過ごさないといけないことが、どこか気持ちわるかった。

 そう偽装した自分に気持ちわるいと思うのではなくて、その奥にいる本当の自分の居心地が、悪かったのだ。本当の自分が、偽装した自分に居場所の面積を奪われて、すみっこにいて、でもこんなにおしこめられてどう過ごしていいのかわからない、といってどこに落ち着いたらいいのかわからなくて、それが気持ちわるかった。

 毎日のように働きに行って、本当のわたしだと思う自分が、世界に存在している時間が減った。わたし以外の何かになっている間、本当のわたしというものは、無なのだ。

    その日も働きに出た。いつものように愛想笑いをして、ロッカーで着替える。いつものように愛想笑いをしてお客さんを出迎える。いつものように、あ。あの人はなんで、あんなこと言うんだろうなあ。朝見た、あの、夜に送られてきたライン。なんであんなことが言えたんだろうか。わたしのことが、好きって、言ったじゃないか。

    どうでもいい喧嘩だったと思う。昨日、なんとなくお互い譲れないようなことを、ついついラインで話してしまった。あーあ、失敗だった。なんであんなことを、あの人は。ぐらり。

    と、頭の中が揺れた気がして、気づいたら喉がつまり、わたしの「いらっしゃいませ」は声にならず、じんわりと涙が出て止まらなかった。頭が余計にぐらんぐらんときて、あ、もうダメだ。と、思った。もうこのままここでへたりこんでしまって、わたしの社会的な何かを全て諦めようかと思った。

    後ろから、同僚がやってきて、わたしを裏へ連れて行って、そのまま抱きしめた。

    10程は年上の、いつも笑顔で愛想のいい女性が、「大丈夫よ、つらかったのね。大丈夫。あなたはいつも笑顔でがんばってる」と言った。わたしのことを優しく抱きしめながら。

     わたしはその女性の胸の中、優しく伝わる体温を感じた。一瞬冷静になったが、涙をすぐ止めることはできなくて、そのまましばらくは泣いた。


    もう引っ越す予定のアパートの前で、わたしはあのときのことを思い出していた。この生ぬるいコンクリートのように、あのときのあの女性の体温は生ぬるくて、優しい人だとは思っていたけど、でもわたしが彼女に向ける笑顔は、申し訳ないけれど愛想笑いのうちのひとつで、彼女がわたしの腕に触れたとき、一種の気持ち悪さを感じた。よく知らない人の優しさは、このコンクリートの生ぬるさと同じで、固さを感じたそちら側に、わたしは溶けることができなかった。でも、本当に嫌なわけじゃないのだ。温かいということは事実であって、それを素直に受け取れなかったあの日の自分のことを思い出している。でも今、コンクリートの温かさを感じながら、きっと今でも変わらないと確信してしまっている。明日引っ越す予定のこの部屋は西に窓がついていて、帰るといつも生ぬるかった。